
実家の納屋の奥で、シートを被ったまま眠っているクボタのコンバイン「SR-M20」。
そのようにお悩みではないでしょうか。
実は、この「SR-M20(通称:スカイロードモンロー)」、日本国内での現役利用は減りつつありますが、海外市場や部品市場では「神機」と呼ばれるほどの潜在的な需要を秘めています。特に搭載されているエンジンは、世界的な産業用動力としての評価が非常に高く、ボロボロの見た目からは想像できない価値が残っているケースが多々あります。
この記事では、SR-M20のカタログスペックから、整備士だけが知るメンテナンスの急所、そして「損をしないための処分・売却相場」までを徹底的に解説します。処分料を払って手放す前に、ぜひこの機械の「本当の価値」をご確認ください。
クボタ SR-M20(スカイロード)のスペック・製造年・特徴
クボタ「スカイロード」シリーズは、平成初期の日本の農業を支えたベストセラー機です。中でも「SR-M20」は、日本の圃場事情に最も適したコンパクトさと、当時画期的だった水平制御機能を備えた名機です。まずはその基本性能を数値で確認しましょう。
主要諸元表
SR-M20を知る上で欠かせないスペックデータを以下の表にまとめました。特にメンテナンスや部品発注時に必要となる「オイル量」や「バッテリー型番」は、実機を確認する際の手引きとしてご活用ください。
| 項目 | データ/数値 | 備考・詳細 |
|---|---|---|
| 販売名称 | スカイロード SR-M20 | Skyroad Series (SRシリーズ) |
| メーカー | 株式会社クボタ (Kubota) | 日本国内最大手農機メーカー |
| 製造期間 | 1990年代前半~中期 | 平成初期の主力モデル |
| エンジン型式 | Kubota D1105 | 水冷4サイクル3気筒ディーゼル |
| 最大出力 | 20 PS (馬力) | 型番「20」は馬力を示す |
| 排気量 | 1,123 cc | クボタ製小型ディーゼルの傑作機 |
| 条数 | 2条刈り | 小規模圃場向け標準仕様 |
| 走行方式 | ゴムクローラー式 | フルクローラータイプ |
| 変速方式 | HST(静油圧式無段変速) | クラッチ操作不要で前後進が可能 |
| 機能 | モンロー(自動水平制御) | 機体傾斜を自動補正 |
| 適合バッテリー | 75B24L | 寒冷地仕様等は異なる場合あり |
| エンジンオイル量 | 4.0 L 〜 5.1 L | オイルパン形状により変動(要レベルゲージ確認) |
| 燃料タンク容量 | 約 20~25 L | 軽油(ディーゼル) |
| 機体重量 | 約 900 kg 〜 1,000 kg | グレンタンク等の仕様による |
| 機体サイズ(約) | 全長2,600mm×全幅1,400mm×全高1,600mm | 保管スペースの目安 |
ここがポイント:エンジンの価値
実用性と特徴
SR-M20の最大の特徴は、型番の「M」が示す通り「モンロー(自動水平制御機能)」を搭載している点にあります。
- モンロー(Monro)の革新性
当時の水田、特に排水性の悪い湿田や、あぜ越え時の傾斜において、機体が傾くと選別機能が低下し、お米をこぼしてしまう(ロスする)課題がありました。SR-M20は、左右のクローラーの高さを油圧シリンダーで独立制御することで、どんな悪路でも機体を水平に保つことが可能でした。
- 日本の農家に適した2条刈り
大規模な4条・5条刈りと異なり、狭い棚田や変形地でも小回りが利くサイズ感は、兼業農家の多い日本の事情に合致し、爆発的に普及しました。
★ SR-M20 の市場評価と需要の理由
発売から30年近くが経過した機械ですが、なぜ今でも値段がつく可能性があるのでしょうか。その理由は「完成車」としての価値ではなく、「部品」と「輸出」の需要にあります。
現在の市場評価と「部品取り」としての価値
正直にお伝えすると、日本国内の中古農機市場において、SR-M20を「稲を刈るための機械」として再販するケースは減っています。しかし、メーカーからの新品部品供給が終了している現在、現役でSRシリーズを使っているユーザーや修理業者にとって、本機は「宝の山(ドナー機)」となります。
| カテゴリ | 価格帯 (目安) | 市場の動き |
|---|---|---|
| 中古販売価格 | 20万 〜 30万円 | 整備済み・店舗販売価格 |
| 買取相場(実動) | 3万 〜 6万円 | 輸出・部品取りとしての評価 |
| 買取相場(不動) | 0円 〜 1万円 | 鉄・非鉄金属スクラップ価値+α |
| エンジン単体 | 3万 〜 5万円 | D1105エンジンの単体取引価値 |
| 部品単体 | 数千円〜 | デバイダー、電装品など |
なぜコンバインの輸出はトラクターより難しいのか
「日本の農機具は海外で高く売れる」とよく耳にしますが、コンバインに関してはトラクターほど単純ではありません。
- 用途が限定的
トラクターは「牽引車」として世界中で使えますが、コンバインは「稲作地帯」かつ「ジャポニカ米(短粒種)」に近い品種を扱う地域(アジア圏)でしか需要がありません。
- 輸送コストの問題
コンバインは形状がいびつで、海上コンテナに積載する際にデッドスペース(隙間)が多く生まれます。輸送費が高騰している昨今、完成車のまま輸出するとコスト割れしてしまうのです。
そのため、現在の主流は「解体輸出」です。現地で需要のある「エンジン」「走行部(クローラー・転輪)」などを取り外し、コンパクトにして輸出されます。つまり、「動かなくても、エンジンが生きていれば価値がある」というのは、この輸出形態によるものです。
国内の「部品需要」と資源価値
もし輸出ルートに乗らなくても、国内には資源としての価値があります。SR-M20は約1トンの重量があり、鉄・アルミ・ステンレス・銅(配線)の塊です。
- 金属スクラップとしての価値: 昨今の金属相場高騰により、素材だけでも数千円の価値があります。
- 国内補修部品としての需要: ヤフオク等では、SRシリーズの電装部品や生きたクローラーが高値で取引されています。
「海外で大人気!」という過度な期待は禁物ですが、「資源と部品の山」として、処分料を払うどころかプラスになる可能性は十分にあります。
【所有者必見】型番プレート・アワメーターの確認
査定を依頼する際、業者から必ず聞かれるのが「型式」「製造番号」「アワー(稼働時間)」です。SR-M20は古い機種のため、これらの情報が正確でないと査定価格が出ないことがあります。
刻印・プレートの位置
クボタのコンバインは、以下の場所に重要な情報が記載されています。
| 確認項目 | 具体的な位置(例) | 目視のコツ |
|---|---|---|
| 機体型式プレート | 運転席の足元(ペダル付近)
または座席横のカバー |
銀色のアルミプレートを探してください。汚れを拭き取ると「SR-M20」の文字が見えます。 |
| 製造番号(シリアル) | 機体左側面のフレーム
または後部エンジン点検口付近 |
フレームに直接数字(5〜6桁)が打刻されている場合があります。盗難車でない証明にもなる重要情報です。 |
| エンジン型式 | エンジン本体ヘッドカバー付近
燃料噴射ポンプ取付面 |
オイル汚れで見えにくいですが、「D1105」等の刻印があります。 |
| アワメーター | 運転席メーターパネル内 | キーをONにしないと表示されない場合があります(SR系は機械式が多い)。 |
稼働時間(アワー)とゴムクローラーの状態
コンバイン査定の最重要ポイントをお伝えします。それは、アワメーターの数字よりも「ゴムクローラーの状態」です。
- ゴムクローラーのヒビ割れ
クローラーは消耗品の中で最も高額(新品は2本で10万円以上)です。車両価値が低いSR-M20において、クローラー交換が必要な個体は、実質的に「商品価値ゼロ(部品取り)」と判断されます。
- プラス評価: ヒビ割れがなく、ラグ(山)が高い。
- マイナス評価: 接地ゴムに亀裂が入っている、芯金(中の鉄)が見えている。
なお、SR-M20のクローラーサイズは仕様により異なりますが、多くは以下のサイズが採用されています。
- 360mm × 79mm × 44リンク (湿田用ワイド仕様)
- 330mm × 79mm × 42リンク (標準仕様)
※クローラーの内側にサイズが刻印されていますので、必ずご確認ください。
よくあるトラブルと「修理 vs 売却」の判断
「動かないから修理してから売ったほうがいい?」という質問をよく頂きますが、結論から言うと「修理せずにそのまま売る」のが正解です。その理由を解説します。
コンバインによくある不具合(足回りとカッター)
SR-M20のような低年式機で頻発するトラブルは以下の通りです。
- クローラーの劣化・切断
経年劣化で硬化したゴムは、動かした瞬間に切れることがあります。
- カッター(切断部)の固着
稲わらのカスが残ったまま放置されると、湿気で錆が発生し、カッターの刃が固着します。無理に回すとベルトが焼き切れます。
- ネズミ害(ラットダメージ)
暖かいエンジンルームはネズミの格好の巣になります。配線をかじられるとモンロー制御やエンジン始動ができなくなり、配線の全交換(修理不能に近い状態)となります。
高額修理になる前に手放すべき理由
なぜ修理してはいけないのか、簡単な収支シミュレーションを見てみましょう。
- 【ケースA:修理して売却】
- 修理費(クローラー交換・整備): -120,000円
- 買取査定額(完動品): +70,000円
- 最終収支: -50,000円(赤字)
- 【ケースB:現状のまま売却】
- 修理費: 0円
- 買取査定額(部品取り): +10,000円
- 最終収支: +10,000円(黒字)
このように、SR-M20の市場価値は、新品部品代よりも低いのが現実です。「バッテリーを充電する」「泥を落とす」程度の整備ならOKですが、お金のかかる修理は絶対に避けてください。
部品の供給停止や高額な修理費により、個人での維持が難しくなっているのが現状です。
もし、高額な修理見積もりに驚いているなら、修理を決断する前に一度、現状のままいくらで売れるかを確認することをお勧めします。
SR-M20 の買取相場と高く売るための出口戦略
では、少しでも高く、確実に手放すためにはどうすればよいのでしょうか。
やってはいけない「処分方法」
- 近所の鉄くず屋へ持ち込む
コンバインはゴムやプラスチック、廃油などの「不純物(ダスト)」が多いため、純粋な鉄スクラップとして扱われません。「処分料」や「解体手間賃」を請求され、逆にお金を払うことになるリスクがあります。
- 農協(JA)への下取り相談
JAは基本的に新品への買い替えを前提としています。SR-M20のように古すぎる機種は「査定対象外」となり、リサイクル処分料がかかるケースが大半です。
正解は「農機具・重機の専門買取店」
SR-M20を評価できるのは、「部品単位での販売ルート」や「海外(東南アジア)への独自販路」を持っている専門業者だけです。
彼らは「日本で売れなくても、ベトナムならエンジンが高く売れる」「クローラーが生きていれば在庫パーツにできる」という計算ができるため、不動車やボロボロの機械でも「0円以上」の値段をつけることができます。たとえ国内では0円でも、海外基準なら数万円の価値がつく可能性があるのです。
おすすめの買取査定サービス
古い農機具、特に部品価値や輸出価値を見極める必要があるSR-M20の売却には、以下のサービスが適しています。1社だけで判断せず、複数社の見積もりを取るのが鉄則です。
1. 農機具買取査定君
古い農機具の扱いに慣れた、全国の優良農機具店へ一括で査定依頼ができます。地域密着型の業者が多いため、大手では切り捨てられるような「部品需要」も丁寧に見てくれる可能性があります。
2. ヒカカク!
最大20社から一括で見積もりを取ることができます。「A社では0円だったけど、B社では3万円ついた」というケースは農機具買取で頻繁に起こります。安く買い叩かれないためのリスクヘッジとして利用価値が高いサービスです。
3. トラックファイブ
もし農機具だけでなく、古いトラックや重機、建設機械もまとめて処分したい場合はこちらが最強です。即日現金化が可能で、輸出ルートが非常に太いため、動かない機械でも重量ベースやエンジン価値でしっかりと値段をつけてくれます。
【コラム】査定額アップのための「写真撮影」テクニック
Web査定やLINE査定を申し込む際、業者に送る「写真」の撮り方ひとつで、査定額(というより業者の本気度)が変わることをご存知でしょうか?
SR-M20のような古い機種の場合、以下のポイントを押さえた写真を送ると、「この人は分かっている」「状態が明確だから高値を出しやすい」と判断されます。
- クローラーの「ひび割れ」接写
遠くからの写真だけでなく、あえて一番ヒビがひどい部分をアップで撮ってください。「隠さない」姿勢が信頼を生み、業者は正確なコスト計算ができるため、安全マージン(リスク分の大幅減額)を削ったギリギリの高値を出しやすくなります。
- サイズ刻印(例:360x79x44)
クローラー内側のサイズ表記が見える写真は必須です。これが分かると、業者は「手持ちの中古在庫で直せるか」を即座に判断できます。
- エンジンルームの内部
カバーを開け、エンジンの型式プレート(D1105の文字)と、エンジン全体が見える写真を撮ります。油漏れでギトギトになっていないか、あるいは乾いているかは重要な判断材料です。
まとめ
クボタ SR-M20は、製造から長い年月が経ちましたが、決して「ゴミ」ではありません。
- 完成車としての需要は低いが、エンジン(D1105)と部品の需要は高い。
- アワメーターよりも、ゴムクローラーの状態が査定額を左右する。
- 修理はせず、現状のまま「輸出・部品に強い専門業者」へ査定に出すのが正解。
納屋で眠っているその機械は、日本の農業を支え抜いた名機です。そしてその心臓部は、海を越えて新たな国で活躍できる可能性を持っています。
鉄くずにしてしまう前に、ぜひ一度、専門家の査定を受けてみてください。思わぬ臨時収入になるだけでなく、愛機を次の役割へと送り出す最善の方法になるはずです。
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